第9惑星ビニル

見た映画の感想を書き綴ります。

映画感想『スカイライン 奪還』ナメてた地球人が実は殺人マシンでした

f:id:sexualrocker:20181119234623j:plain原題:Beyond Skyline
製作年:2017年
製作国:イギリス・中国・カナダ・インドネシアシンガポールアメリカ合作
監督:リアム・オドネル
出演:フランク・グリロ、ボヤナ・ノバコビッチ、ジョニー・ウェストン、カラン・マルベイ、アントニオ・ファーガス、イコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアン

あらすじ:エイリアンが地球を征服しに来たので返り討ちにします。

超大型宇宙船から放たれる青い光が人々を吸い込む…という地球規模の危機をほぼ全編LAの高級マンション内だけで描くという低予算映画にも関わらず抜群のVFXと息をつかせぬ怒涛の展開で大ヒットしたSF映画スカイライン 征服』(2010年)。その続編にあたるのが今作『スカイライン 奪還』です。エイリアンになすすべもなく侵略される人々を描いた『征服』の続編はいったいどうなるのか…と思っていたら出演がフランク・グリロ、イコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアンという超武闘派俳優ばかりで「あっこれエイリアンをボッコボコの返り討ちにするやつだ」と即座に理解できたのを覚えています。
実際に見てみると…これがもうサービス精神の塊というか、作り手がやりたいことを全部詰め込んだ夢のような映画でした。左手に赤ちゃん、右手にエイリアン・ウェポンを装着したフランク・グリロインドネシア最強格闘技シラットでエイリアンをただの肉塊にするイコ・ウワイス!人間の格闘に影響されたのか回し蹴りをかましてくるエイリアン!今回物語を大きく動かすことになる『征服』に出てきたアイツ!そして特に何の説明もなく上半身裸で無双するヤヤン・ルヒアン!(ちなみに監督はヤヤンのキャラをどう使うか迷っていて最終的に現場で今のような扱いに決まったそうです。確かにそんな感じがします!!)こんな素晴らしいものを見せてもらえるなんて!もちろん映画を見ている間は終始笑顔。上映終了後もにっこにこの笑顔で劇場を出ることができました。
製作・監督・脚本のリアム・オドネルは前作『スカイライン 征服』の脚本を手がけてスカイライン世界を作り上げた男。好きな映画を聞かれると『エイリアン』『プレデター』『ターミネーター』『スターシップ・トゥルーパーズ』『インデペンデンス・デイ』と答え、尊敬する映画監督は「ジェームズ・キャメロンジョン・カーペンター、そしてポール・バーホーベン」と答える信頼できる男です。個人的に映画の趣味がドカブりで「こいつはもしかして俺か?」と思っていたら1982年生まれの36歳ということで僕と同世代でした。向こうでも「午後のロードショー」みたいな番組がやってるのでしょうか。
LA市警のマーク(フランク・グリロ)と息子のトレント(ジョニー・ウェストン)が乗っていた地下鉄がエイリアンの襲撃を受けます。そこで知り合った地下鉄の車掌さんや盲目の老人とともに巨大宇宙船に吸い込まれてしまいます。前作は予算の都合で描けなかったという宇宙船の内部をこれでもか!と見せてくれます。さらに生物の体内のようなグロテスクな船内に死体がゴロゴロ転がっているというゴアさ。吸い込まれた人間が実験動物のように扱われたり消耗品のように捨てられたりする描写はまさにR15指定!という迫力です。
そこからなんやかんやあって内戦状態のラオスに不時着し、反政府ゲリラのスア(イコ・ウワイス)と政府軍の捕虜チーフ(ヤヤン・ルヒアン)と合流したあたりからこの映画はSFスリラーからSFバトルアクションにシフトしていきます。いくら武闘派が揃っても巨大武器と兵力を持つエイリアンを倒すのは難しいのでは…というこちらの不安をよそに、追い詰められた一行がゲリラとともに本当に銃火器と近接格闘のみで地球を「奪還」していく様は血が滾ります。余談ですが本作のクリーチャーデザインアーティストがイコとヤヤンの強烈なアクションのテスト映像を見て「このままでは絶対にエイリアンスーツが壊れる」と判断して急遽スーツの一部を柔らかい素材で作り直したという彼ららしい豪快なエピソードがあります。
エイリアンVSシラットという夢のようなシーンは当然最高なのですが、最終決戦地をラオスにしたことでかつてベトナム戦争アメリカ軍用機から猛爆撃を受けたという歴史的背景を彷彿とさせつつ、マークとスアの間に「かつて戦争で争った国同士でも共通の敵が現れれば共に闘う」という文脈が生まれて物語に厚みを持たせているのが素晴らしいと感じました。一見大味な映画に見えるかもしれませんが、マークとトレントの親子関係や、"指輪"に関する描写、冒頭に出てくる女性の伏線等々、ストーリー運びはかなり丁寧に作られていると感じました。
このようにエイリアン侵略スリラーから始まり、ゴア描写、死体の山、巨大宇宙船、エイリアンのバトル、そしてベトコンに武術アクションに大怪獣バトル(!)、さらには「おおおお!」と声を上げたくなるほど燃えるラストまで盛りに盛った特盛っぷりに感服しました。はっきり言って個人的2018年ベスト級の映画です。作り手には感謝と拍手を送りたいと思います。既に脚本が完成しているという3作目も絶対に作ってほしい!

 

・『スカイライン 征服』

エイリアンが地球を征服するまでの三日間をLAの高級マンションにいる普通の人の目を通して描くSFスリラー。ラスト10分のアゲが本当にすごいのでぜひ見てほしいと思います。今作にも繋がる話なので『奪還』鑑賞前に予習することを強くお勧めします。

 

・『ザ・レイド

 インドネシアの格闘技シラットと、イコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアンという映画武術界の至宝を世界に知らしめたアクション映画の傑作。マフィアの巣食うマンションに閉じ込められた特殊部隊が脱出を試みるスリラー要素と超絶技巧のシラットアクションが融合した素晴らしい映画です。

 

VFX制作会社ハイドラックス

ハイドラックス - Wikipedia

スカイライン 征服』の監督を務めたグレッグ&コリン・ストラウス兄弟が設立したVFX制作集団。初期の仕事がリンキン・パークレッド・ホット・チリ・ペッパーズのMV制作だったというエピソードも最高ですし、手がけた映画のラインナップを見るともう何というか「俺の家のDVD棚か!」と言いたくなるぐらい最高の映画ばかりです。映画界ではダルデンヌ兄弟コーエン兄弟ルッソ兄弟といった巨匠兄弟が有名ですがストラウス兄弟もいるぞ!と高らかに叫びたくなります。

 

・信頼できる男、リアム・オドネル監督

eiga.com

moviche.com

まるで午後のロードショーで育ったかのような素晴らしい趣味をお持ちの監督。フランク・グリロに出演をオファーしたのはギャビン・オコナー監督の『ウォーリアー』を見たのがきっかけ、というエピソードも個人的には100点満点です。