第9惑星ビニル

見た映画の感想を書き綴ります。

2024年Audibleで読んで面白かった本10選

こんにちは、ビニールタッキーです。

とにかく本を読むのが苦手なんです。子どもの頃は児童文学をよく読んでいたものの、中学ぐらいからあまり本を読まなくなってしまいました。大学時代も一端のオタクだったにも関わらず文章を読むのが苦手すぎてラノベブームに乗れなかった人間です。そのコンプレックスを抱えたまま社会人になり、20代後半あたりで「さすがに何かのメディアに触れて文化を吸収したいなあ」と思い映画趣味に没頭していったという経緯がありました。

一時期は電子書籍などにも挑戦したのですがタブレット上の文章は目が滑るという現象を体験して挫折。(本当にあるんですね、あれ)そんな時「聴く読書」と言われるAmazon Audibleが3か月99円キャンペーンをやっていたのが2年ほど前。電子書籍での苦い経験があったためとりあえず入ってみて合わなかったら辞めようぐらいの気持ちで入りました。

当時は自分の周りでSF小説「三体」の話をする人たちが多かったのですが、活字苦手な自分には超長くてハードなSFの本なんて難攻不落の要塞ぐらいに思ってました。ちょうどいい機会だと思いAudibleで挑戦してみたのですがこれがスルスル読める(聴ける)。あっという間にAudible読書に慣れることができました。

そうなると今話題の本、前から気になっていたけど読めなかった本、友人知人がお薦めしていた本などをAudible内で検索してみるんですが意外とあったりするんです。というわけで今年はそんな本たちを読みまくった年となりました。皆さんにはどうでもいいことかもしれませんが自分にとっては読書元年と呼びたくなるほどめちゃくちゃ本を読んだ年だったんですよ!

前置きが長くなりましたが2024年Audibleで読んで面白かった本10選をご紹介したいと思います。ただ、読書家が選んだ10冊ではなくAudible読書を最近始めた人間が選んだ10冊であるということをご承知起きください。さらに以下のような条件で選ばれているということもご了承ください。

・家事やリモートワーク中のながら聴きが多いため小説よりも実用書などが多いです。

・その時Audibleで読み放題対象だった本を読んでいるので発行年などバラバラです。

・個人的な興味範囲として科学、環境、歴史、戦争、人権、ジェンダーなどのジャンルに偏っています。

それではどうぞ!

 

砂糖の世界史

著者: 川北 稔

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「砂糖」という調味料が国家、貿易、宗教、身分制度に影響を与え、産業や生活様式まで変えてしまったという歴史を紐解く。砂糖の歴史を知ることは西欧の侵略の歴史や奴隷制の歴史を知ることになる、というとても重要なことを知りました。ちょうど日本のポップカルチャーにおける西洋の歴史認識が話題になっていた時期に読んだのでタイムリーでした。1996年の本なのに全く古びれない内容とわかりやすい文章、そして身近な「砂糖」から世界史が見えるというとっつき易さもあるのでAudibleを始めた人にまずはおすすめしたい一冊です。

 

アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か? これからの経済と女性の話

著者: カトリーン・マルサル 訳:高橋 璃子

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男性が中心となり、女性は不在の状態で構築された経済学の欠陥を突く。環境問題や経済格差などの問題は経済最優先という考え方が原因であり、その考え方の根幹にある経済学に問題があるということを具体例を列挙して指摘する一冊です。「アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?」(=経済学の父:アダム・スミスが自分の夕食を作ってくれた人のことは経済学の対象に含めなかったのはなぜか?)というタイトルの切れ味からわかる通り、経済学の男性中心主義な構造について斬りまくっています。女性の社会進出が盛んであり男女格差などないという印象のスウェーデンの著者が、スウェーデンにもまだまだある男女格差の実態について告発する内容となっているのがとても興味深いです。まさにため息が出るほどの名著です。

 

関東大震災 その100年の呪縛

著者: 畑中 章宏

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現代東京を形成するきっかけとなった1923年の関東大震災。この時に考案された都市集中型で地方を軽視する社会構造、災害などのマイナス要素を国家を統一するナショナリズムに利用するムーブメント、災害時に頻発する流言飛語や集団暴力、多民族に対する排斥などが現代にまで続く100年の呪縛だったことを解き明かす。こちらも名著として有名ですが本当に面白かったです。自然災害の絶えない日本においてかなり文献の残っている大災害である関東大震災を研究することで現代の災害時に発生する諸問題の根幹が見えてくるというのはまさに歴史を学ぶことの重要性を知れる話でした。

 

検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?

著者: 小野寺 拓也, 田野 大輔

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こちらも言わずと知れた名著。主にインターネット上などで度々言われる「ナチスは良いこともした」という様々な言説について本当にそうだったのかを一つ一つ検証する。そんな与太話なんて無視してもいいのに…と思ってしまうような「ナチスは良いこともした」説までしっかり歴史事実を調査して検証する内容に感服してしまいます。しかしそういう真しやかな説を野放しにした結果が現在なのでとても重要な一冊だと思いました。(でもそういう説を語る人に限ってこの本は読まないという事実がSNS等で実証されていてつらい気持ちになります)また、今年公開の映画『関心領域』について語る際にも使用された「凡庸な悪」という言葉がいかに誤解されて浸透しているかという話もとても興味深かったです。

関連書籍と言って良いかわかりませんが、「ナチスだけじゃなく戦時の日本の軍部を対象にこういう本を書けばいいのに」と言われるたびに著者の田野さんが「既にありますよ」と紹介している「日本の植民地支配: 肯定・賛美論を検証する」も実直で丁寧な本なのでおすすめです。

 

暴力とポピュリズムアメリカ史 ミリシアがもたらす分断

著者: 中野 博文

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アメリカで難航する銃規制、市民の武装を保証する憲法、そして2021年の連邦議会襲撃事件など外から見ると奇妙な構造については武装する市民(ミリシア)の存在と成り立ちから考えなければならない、それはアメリカという国家の成り立ちにも直結する話だということを解説してくれる良書。今年見た『シビル・ウォー』という映画でまさに「武装する市民」という危険な存在が登場しますが、どうして彼らのような人々が容認されているのかがよくわかりました。ミリシアという言葉は知っていましたが、歴史に名を残す有名なミリシアの話などは全く知らなかったのでとても勉強になりました。2025年は銃規制反対派のトランプ氏の政権が再び始まるということもあり改めて読み返したい一冊です。

 

科博と科学──地球の宝を守る

著者: 篠田 謙一

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田舎住みですが気になる企画展があると必ず足を運ぶくらい好きな国立科学博物館の館長が語る科博の特異性と科学と文化の関係についてのお話。シンプルに面白かったです。特にゴリゴリの研究員が一般大衆の興味を引く展示を考えるというマスとコアのバランスの難しさや、マスメディアと組む日本の企画展は世界的にも珍しいという話、また館長さんの分野である人類学の話も興味深くスラスラと読めました。近年の攻めた企画展(ミイラ展や和食展など)の裏話も聞けて楽しい一冊でした。

 

バッタを倒しにアフリカへ

著者: 前野 ウルド 浩太郎

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話題の本も(発売日から時差はあれど)Audibleで読めるのはうれしいですね。バッタの研究、特にバッタによる農業被害”蝗害”を解決するために単身モーリタニアに渡ったバッタ博士の手記。ゼロベースからあらゆる工夫と失敗を繰り返して研究ベースを積み上げていく様子が現代の冒険譚という感じでガンガン読ませてくれます。そして著者の前野さんの砕けた文章(漫画やアニメネタの引用が多い)と特異な人物像(表紙を見れば伝わると思います)のおかげでアカデミックな内容のはずなのに読みやすい。世界で活躍する日本人の話なのですがいわゆる日本スゴイ!ではなく、この人ヤバイ!となる内容になっているのもよかったです。続編でもある「バッタを倒すぜ アフリカで」も現在読み進めています。

 

ネット右翼になった父

講談社現代新書 著者: 鈴木 大介

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老いてネット右翼化した父親のことを綴った手記が話題となり、父の死後に「どうしてこんなことになってしまったのか」と筆者が考察した本。親が右翼系YouTubeSNSアカウントに染められてネトウヨ化してしまう…という話はよく聞きます。しかし筆者が感じた奇妙な違和感を基に父親の生前の知り合いや家族に聞き込み調査を続けると驚きの事実が浮かび上がってくる…というまるで推理小説のようなスリリングな内容でした。今年読んだ中で最も驚いたし複雑な感情を抱いた一冊です。とにかくタイトルから読み取れる内容とは全く違う読後感を味わうことになる本なので興味のある方はぜひ読んでみてください。

 

魔女狩りヨーロッパ史

著者: 池上 俊一

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15〜18世紀のヨーロッパで起きた「魔女狩り」を軸に当時の風俗や世相を紐解く。単純な集団ヒステリーだけではなく、制度化され執行された経緯やシステムとして組み込まれた歴史を見るとその当時の女性に対するミソジニーが浮かび上がってきます。そして現代も横行する女性差別的な考え方が数百年前からあることにがっかりすると同時に現行のフェミサイドも最新型の「魔女狩り」だということに気付かされます。今年何度も読み返して様々な考え方の参考になった本なので実質ナンバーワンです。とても嫌な気持ちになりますが現代の問題の根幹を捉え、未来を考えるために重要な本だと思いました。

 

国境なき医師団」になろう!

著者: いとうせいこう

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名前だけは誰もが聞いたことがあるはずの「国境なき医師団」。具体的にどういう団体でどのような活動をしているのか?という素朴な疑問をいとうせいこうさんがインタビューした本。「医師団」と聞くとお医者さんしかいないのかな、と思ってしまいますが実際に取材してみると現地で水や電気の準備をする人、運送網のない地域に薬や包帯などを調達をする人、財務担当や採用担当など本当に多岐にわたる仕事があり、出身も立場もバラバラの人たちが同じ意志を持って集まっているということがとてもよく伝わる内容になっています。民族紛争や大国による侵攻が多い中、個人的に今年とても影響を受けた一冊です。

関連書籍として同時期に読んだ「「国境なき医師団」の僕が世界一過酷な場所で見つけた命の次に大事なこと」もとても面白かったです。これらの本を読んだことをきっかけに国境なき医師団への寄付を始めました。

www.msf.or.jp

 

以上です。

ちなみに今読んでいる本ですが「イラク水滸伝」(めっちゃくちゃ面白い!)や「なぜ難民を受け入れるのか―― 人道と国益の交差点」(とてもわかりやすい)や「国家はなぜ衰退するのか 上」(結構長いしむずかしいけどおもしろい)などです。このように全く本を読まなかった人間が読書という習慣を身につけることができたのでAudibleには感謝です!月額高いけどこのサービス内容だったら納得ですよ!(※Audibleからは一切お金をもらっていません。むしろ払ってます)来年もいっぱい読みまーす!

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