こんにちは、ビニールタッキーです。
前回の「月刊おもしろ映画宣伝2024年01月号」で少し触れたのですが、最近タレント・芸能人が映画の予告編などにナレーションを入れて紹介する「タレントナレーション予告編」が増えてるような気がするんです。
幅広い層から注目を集めるため、日本語吹替版を作る予算がないため、など様々な理由があると思います。他にもアニメ『鬼滅の刃』以降の第6次声優ブームにあやかって有名声優さんが予告編のナレーションを担当し、それが映画・芸能ニュースで取り上げられるという機会も増えたような気がします。また、(僕は好きですが)映画ファンに忌み嫌われるタレント吹替ほど作品に直接の影響は与えないものの、そのタレントが参加したことで露出する媒体・ニュースサイトが増えるという効果も考えられます。
しかし「最近増えているような気がする」という何となくの気分では納得いかない理系タイプの僕です。(過去に本当に日本映画の予告編は叫んでいるのか?というのを検証したことがあります)ものすごくめんどくさいのですがだいたい2019年〜2023年の5年間+2024年2月現在までのタレントナレーション予告編を探してみました。ちなみに「タレント」の評価軸はかなり曖昧です。映画ニュースサイト等を検索して「○○がナレーションを担当」と記事タイトルに書かれていればその人の知名度で注目を集められるポジションにあるとして「タレント」とします(※ただし吹替で参加した声優・タレントさんが兼任でナレーションも担当しているのはグレーゾーンとして個々に判断しました。あくまでその映画に参加はしてないけどナレーションは担当するという絶妙さを味わいたいので)。また、本編映像にナレーションを付けたものもひっくるめてここでは「タレントナレーション予告編」と定義しました。果たして本当に増加傾向にあるのか、オファーされるタレントに傾向やトレンドがあるのかどうか見ていきましょう。
2019年
「キャプテン・マーベル」本予告解禁、中村悠一がナレーション担当 - 映画ナタリー
キャプテン・アメリカの吹替担当の中村悠一さんという文脈があるので入れさせて頂きました。
浪川大輔がナレーション、ニコラス・ホルト主演「トールキン 旅のはじまり」予告(動画あり) - 映画ナタリー
こちらもRotR繋がりでフロドの日本語吹替を担当した浪川大輔さんです。正直こういうオファーは技アリで嬉しいです。
『ファイティング・ファミリー』本予告公開 くりぃむしちゅーの有田哲平がナレーション担当|Real Sound|リアルサウンド 映画部
こういうのちょうだい!もっと!こういう「◯◯です!」と名乗って始まるやつこそ純粋な「タレントナレーション予告編」という感じでグッときます。
高嶺の花を射止める方法教えます!山里亮太が「ロング・ショット」予告にナレーション - 映画ナタリー
高嶺の花を射止める恋愛映画のナレーションに山里亮太さんという采配、素晴らしいと思います。
2019年:4本 あら、少なめですね。
2020年
『鵞鳥湖の夜』男女の視点で描いた異色の予告編 ナレーションに村上淳&中村優子|シネマトゥデイ
いやーこれはいい!『鵞鳥湖の夜』は大好きな映画なんですがこの男サイド・女サイドからの二つの雰囲気たっぷりなナレーションという宣伝はめちゃくちゃいいですね。とにかく色っぽい。
『モンテッソーリ 子どもの家』本上まなみ&向井理のナレーション入り予告編 独自の教育の数々が|Real Sound|リアルサウンド 映画部
『キングスマン:ファースト・エージェント』ワールドプレミア開催 木村昴参加の新映像も|Real Sound|リアルサウンド 映画部
劇場に熱狂が戻る光が見えてきた、大塚芳忠ナレーションの「TENET」新予告(動画あり / コメントあり) - 映画ナタリー
大塚芳忠さんがテレビ朝日版『ダークナイト』でジョーカーの吹替を担当したから、という少し遠回し感のあるオファーです。この頃ちょうど鬼滅の刃ブームもあったので鱗滝さんというキャッチーさもあったのかもしれません。(もしくは鶴見中尉?)
「魔女がいっぱい」岡本信彦が魔女の見分け方を伝授、「とても魅力的なヴィラン」(動画あり) - 映画ナタリー
『イーディ、83歳 はじめての山登り』予告編公開 ナレーションは田口トモロヲが担当|Real Sound|リアルサウンド 映画部
思った以上にプロジェクトXっぽくてびっくりしました。
『トータル・リコール 4K』予告編公開 ナレーションは『金ロー』元ナビゲーターの坂上みき|Real Sound|リアルサウンド 映画部
金ロー感全開!!
2020年:7本 ちょい増えた。パンデミックが本格化した年でもありましたね。
2021年
キングよ永遠なれ、チャドウィック・ボーズマン主演作「21ブリッジ」を田村真が紹介(動画あり / コメントあり) - 映画ナタリー
こちらも声優さんですが『ブラックパンサー』のティチャラの吹替と紐付けて田村真さんが解説しているのがとても誠実な文脈でいいなと思いました。
リーアム・ニーソン主演『ファイナル・プラン』7月公開 津田健次郎ナレーションの予告編も|Real Sound|リアルサウンド 映画部
出ましたツダケンさん!
『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』恐怖映像収めた日本版予告編 ナレーションは諏訪部順一|Real Sound|リアルサウンド 映画部
諏訪部さんも手堅い仕事。
『ベイマックス』声優がナレーション担当 『ロン 僕のポンコツ・ボット』ティザー予告公開|Real Sound|リアルサウンド 映画部
えっいいの!?と一瞬思ったんですがディズニー傘下のアニメなのでセーフ。
津田健次郎がナレーション ヒュー・ジャックマン『レミニセンス』日本版特報&ポスター|Real Sound|リアルサウンド 映画部
本日2回目のツダケンさんです。
『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』10月22日公開へ 木村昴ナレーションの吹替版予告も|Real Sound|リアルサウンド 映画部
木村昴は吹き替えとして参加しているのでレギュレーション外なのですが、この予告編の異様なハイテンションが大好きなのでつい…
声優・能登麻美子がナレーション R18+ホラー『マリグナント 狂暴な悪夢』特別映像公開|Real Sound|リアルサウンド 映画部
能登麻美子さんはこれが初のホラー映画予告ナレーションだそうです。それがあの傑作『マリグナント』だったのは誇るべきことだと思います。
宮世琉弥、青春映画の予告ナレーションでザ・スミスの魅力に触れる(コメントあり) - 映画ナタリー
「マトリックス」新作の本ポスター解禁、遠藤憲一や水野勝、かまいたちのコメントも - 映画ナタリー
◢||🟩#マトリックスデー🟩||◣
— 映画『マトリックス レザレクションズ』公式 (@matrix_movieJP) 2021年9月11日
『#マトリックス レザレクションズ』#遠藤憲一 さんタイトルコール特別編集版CM、放送ご覧いただけましたか?
ネオの新たな物語はどんな展開を見せるのでしょうかー
12月全世界公開🎬続報、どうぞお楽しみに💊 pic.twitter.com/v8T0ITPTQX
『マトリックス』一作目から予告編のナレーションを担当してきた俳優の遠藤憲一さんが『レザレクションズ』でも担当!こういうのはシンプルに嬉しいですね。
2021年:9本 声優さんのナレーションが増え、それが映画サイトにピックアップされる案件が増えました。まさに『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』以降の声優ブームを感じます。
2022年
「スペンサー ダイアナの決意」が今秋公開決定、予告編ナレーションは沢城みゆき - 映画ナタリー
沢城みゆきさんは大好きな声優さんですがなぜダイアナのナレーションなのか…関連性が分かりませんでした。
【2024/02/16追記】
“ダイアナプロジェクト”アンバサダーに米倉涼子が就任! 映画『スペンサー ダイアナの決意』ナレーション入り本予告映像が公開 - otocoto | こだわりの映画エンタメサイト
米倉涼子版もあると教えて頂きました!2013年の映画『ダイアナ』でナオミ・ワッツ演じるダイアナの吹替を担当したことがあるそうです。【追記終わり】
大沢たかお、檀れいが「ナイトメア・アリー」日本版予告でナレーション(コメントあり) - 映画ナタリー
だんだんタレントナレーションっぽくなってきましたね!
素顔に迫るドキュメンタリー「オードリー・ヘプバーン」予告編、語りは池田昌子 - 映画ナタリー
オードリーの吹替を担当した池田昌子さんという技アリオファー。良いですねえ。
『エルヴィス』津田健次郎ナレーションの特別映像公開 主演俳優が語るライブシーン秘話も|Real Sound|リアルサウンド 映画部
ツダケン3件目。
『ソー:ラブ&サンダー』
— マーベル・スタジオ[公式] (@MarvelStudios_J) 2022年6月28日
なかやまきんに君
“筋肉解説”💪特別動画解禁‼️
破壊力2倍の《パワー!》
2人のソーの鍛え抜かれた肉体美に、
筋肉のスペシャリストも賞賛‼️
『#ソーラブアンドサンダー』
7/8(金) #ソー劇場降臨
https://t.co/BVtMlJXT7V pic.twitter.com/O1yrjJs0UK
これ大好きです。これなんかもうご本人が出てきてるのでタレントナレーション映像と言っていいのか?と思うんですが素晴らしい出来なのでOKとします。
松重豊がナレーション担当、レストランの人間模様収めた「ボイリング・ポイント」予告(動画あり) - 映画ナタリー
孤独のグルメならぬドッタバタグルメ!
ナ・ホンジン原案のホラー「女神の継承」予告とポスター公開、ナレーションは國村隼(コメントあり) - 映画ナタリー
きたっ…!ナ・ホンジン『哭声』繋がりで國村隼さんナレーションの『女神の継承』予告編!これ本当に怖かった…
カトリーヌ・ドヌーヴ出演「愛する人に伝える言葉」予告解禁、ナレーションは笠井信輔(動画あり) - 映画ナタリー
「ミセス・ハリス、パリへ行く」大竹しのぶがナレーション担当する予告編解禁(コメントあり) - 映画ナタリー
「レイフ・ファインズのファン」津田健次郎ナレ入り『ザ・メニュー』日本オリジナル予告 | cinemacafe.net
ツダケン4件目。しかしナレーションいいわあ…
「Fate」ガウェイン役つながり、水島大宙が語り担当「グリーン・ナイト」本予告 - 映画ナタリー
A24とFGOが繋がる日が来るとは予想していませんでした。
2022年:12本 おおお増えましたね!しかも声優ナレーションもありつつ芸能人の案件も増えました。
2023年
ニコラス・ケイジが“どん底俳優”演じた主演作の予告完成、ナレーターは諏訪部順一 - 映画ナタリー
諏訪部さん!
北イタリアを舞台に友情ドラマ紡ぐ「帰れない山」、三上博史が特報のナレーション担当(動画 / コメントあり) - 映画ナタリー
金熊賞受賞作「アダマン号に乗って」本予告到着、ナレーションは内田也哉子(コメントあり) - 映画ナタリー
すべてのはみだし者に贈る「ゴーストワールド」予告編、ナレーションは中島セナ(動画あり / コメントあり) - 映画ナタリー
“ファイヤー”サポーター:なかやまきんに君がワイスピを激推し!!アツさ爆裂!TVCMスポット&コメント映像が到着!キャラクターポスター(なかやまきんに君ver.)も解禁!!
出ましたきんに君!安定した仕事っぷりです。22、23年といい仕事が続いたので2024年も期待してます!
斎藤工が本予告をナレーション『ストールンプリンセス』INIの新曲が主題歌に | cinemacafe.net
僕自身もクラウドファンディングに参加した『ストールンプリンセス』もタレントナレーション予告です!しかも配給会社の代表の方と斎藤工さんが町で偶然すれ違ったのがオファーのきっかけというエピソードもいいですよね。
「ボブ・マーリー:ONE LOVE」の日本オリジナル特報到着、津田健次郎がナレーション - 映画ナタリー
ツダケン5件目。
宮野真守のナレーション収録「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」予告編が到着 - 映画ナタリー
『チャーリーとチョコレート工場』でジョニー・デップの吹替を担当した宮野真守さんがナレーションということですがその映画とこの映画は別に繋がりがあるわけではないのでニントモカントモ…マモのお仕事自体は最高です。
ジェシー・アイゼンバーグ監督作の予告解禁、大塚寧々と鈴木福がナレーション(コメントあり) - 映画ナタリー
日本のジュリアン・ムーアこと大塚寧々と日本のフィン・ヴォルフハルトこと鈴木福くん。
少女が自分を解き放つ「コット、はじまりの夏」予告、青葉市子がナレーション担当 - 映画ナタリー
映画の雰囲気と青葉市子さんの静かで繊細な雰囲気がベストマッチでした。
2023年:10本 まだまだ健在!
そして…
2024年
指原莉乃が映画ナレーション初挑戦、エマ・ストーン主演「哀れなるものたち」新映像(コメントあり) - 映画ナタリー
なんてアメージング…叶姉妹がナレーションを担当した「ジャンヌ・デュ・バリー」予告(コメントあり) - 映画ナタリー
太田光がウディ・アレン監督作の予告ナレーション「映画の神様、助けてくれ~!」 - 映画ナタリー
井上芳雄がミュージカル版「カラーパープル」絶賛、夏木マリや城田優の推薦コメントも - 映画ナタリー
渡辺謙がナレーションを担当 『オッペンハイマー』日本版オリジナル予告&ポスター公開|Real Sound|リアルサウンド 映画部
藤森慎吾、タモリの“チャラ男肯定”が自信に 「ネクスト・ゴール・ウィンズ」スポット映像でナレーション担当 : 映画ニュース - 映画.com
いかがですか。なんと2024年は始まって約1ヶ月弱で既に6件もタレントナレーション予告編があるのです。これは明らかに増加傾向ですしこのペースで行くと20件は行くんじゃないかと勝手に睨んでいます。
結果としては以下の通りとなりました。
2019年:4本
2020年:7本
2021年:9本
2022年:12本
2023年:10本
2024年2月:6本
2020年から増加しているのはやはりパンデミックの影響があると感じます。お笑い芸人やタレントをPRイベントに呼んで注目を集めるというビジネスモデルが難しくなった時期にTVCMや芸能ニュース、ネット媒体で幅広くPRするための代替策の一つだと感じました。また、作品に直接影響を与え、DVDや配信にまで残るタレント吹替という文化に対する意識の変化が「タレントナレーション予告編」という形に変化したのかな、と個人的に思います。
あと印象に残ったのはツダケンさんの多さですね。今回は洋画に絞りましたが日本映画を含めるともっと増えます。こうして並べて見ると予告編のナレーションはツダケンさんに任せておけば大体いい感じになると思いました。
そしてみなさん、お気付きでしょうか。『トールキン』『ナイトメア・アリー』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』『ネクスト・ゴール・ウィンズ』とサーチライトピクチャーズの映画にタレントナレーションが多い傾向があるということを。今回の検証期間からは外れていましたが2018年の『犬ヶ島』も坂上忍によるタレントナレーション予告編がありました。
これは今回調査してみて初めて気付いた傾向ですね。この謎については引き続き調査したいと思います。
いやーしかしやってみるもんですね。こんなこと誰も気にしてないと思いますがいざ気にしてみるとやっぱり傾向が見えてきました。調べるのはクソめんどくさいのですが、またこういう気づきがあった時はやってみようと思います。
結論:
・タレントナレーション予告編は増えている。
・ツダケンさんは現代の予告編ナレーション請負人。
・サーチライトピクチャーズはタレントナレーションが大好き。