第9惑星ビニル

見た映画の感想を書き綴ります。

映画感想『スカイライン 奪還』ナメてた地球人が実は殺人マシンでした

f:id:sexualrocker:20181119234623j:plain原題:Beyond Skyline
製作年:2017年
製作国:イギリス・中国・カナダ・インドネシアシンガポールアメリカ合作
監督:リアム・オドネル
出演:フランク・グリロ、ボヤナ・ノバコビッチ、ジョニー・ウェストン、カラン・マルベイ、アントニオ・ファーガス、イコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアン

あらすじ:エイリアンが地球を征服しに来たので返り討ちにします。

超大型宇宙船から放たれる青い光が人々を吸い込む…という地球規模の危機をほぼ全編LAの高級マンション内だけで描くという低予算映画にも関わらず抜群のVFXと息をつかせぬ怒涛の展開で大ヒットしたSF映画スカイライン 征服』(2010年)。その続編にあたるのが今作『スカイライン 奪還』です。エイリアンになすすべもなく侵略される人々を描いた『征服』の続編はいったいどうなるのか…と思っていたら出演がフランク・グリロ、イコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアンという超武闘派俳優ばかりで「あっこれエイリアンをボッコボコの返り討ちにするやつだ」と即座に理解できたのを覚えています。
実際に見てみると…これがもうサービス精神の塊というか、作り手がやりたいことを全部詰め込んだ夢のような映画でした。左手に赤ちゃん、右手にエイリアン・ウェポンを装着したフランク・グリロインドネシア最強格闘技シラットでエイリアンをただの肉塊にするイコ・ウワイス!人間の格闘に影響されたのか回し蹴りをかましてくるエイリアン!今回物語を大きく動かすことになる『征服』に出てきたアイツ!そして特に何の説明もなく上半身裸で無双するヤヤン・ルヒアン!(ちなみに監督はヤヤンのキャラをどう使うか迷っていて最終的に現場で今のような扱いに決まったそうです。確かにそんな感じがします!!)こんな素晴らしいものを見せてもらえるなんて!もちろん映画を見ている間は終始笑顔。上映終了後もにっこにこの笑顔で劇場を出ることができました。
製作・監督・脚本のリアム・オドネルは前作『スカイライン 征服』の脚本を手がけてスカイライン世界を作り上げた男。好きな映画を聞かれると『エイリアン』『プレデター』『ターミネーター』『スターシップ・トゥルーパーズ』『インデペンデンス・デイ』と答え、尊敬する映画監督は「ジェームズ・キャメロンジョン・カーペンター、そしてポール・バーホーベン」と答える信頼できる男です。個人的に映画の趣味がドカブりで「こいつはもしかして俺か?」と思っていたら1982年生まれの36歳ということで僕と同世代でした。向こうでも「午後のロードショー」みたいな番組がやってるのでしょうか。
LA市警のマーク(フランク・グリロ)と息子のトレント(ジョニー・ウェストン)が乗っていた地下鉄がエイリアンの襲撃を受けます。そこで知り合った地下鉄の車掌さんや盲目の老人とともに巨大宇宙船に吸い込まれてしまいます。前作は予算の都合で描けなかったという宇宙船の内部をこれでもか!と見せてくれます。さらに生物の体内のようなグロテスクな船内に死体がゴロゴロ転がっているというゴアさ。吸い込まれた人間が実験動物のように扱われたり消耗品のように捨てられたりする描写はまさにR15指定!という迫力です。
そこからなんやかんやあって内戦状態のラオスに不時着し、反政府ゲリラのスア(イコ・ウワイス)と政府軍の捕虜チーフ(ヤヤン・ルヒアン)と合流したあたりからこの映画はSFスリラーからSFバトルアクションにシフトしていきます。いくら武闘派が揃っても巨大武器と兵力を持つエイリアンを倒すのは難しいのでは…というこちらの不安をよそに、追い詰められた一行がゲリラとともに本当に銃火器と近接格闘のみで地球を「奪還」していく様は血が滾ります。余談ですが本作のクリーチャーデザインアーティストがイコとヤヤンの強烈なアクションのテスト映像を見て「このままでは絶対にエイリアンスーツが壊れる」と判断して急遽スーツの一部を柔らかい素材で作り直したという彼ららしい豪快なエピソードがあります。
エイリアンVSシラットという夢のようなシーンは当然最高なのですが、最終決戦地をラオスにしたことでかつてベトナム戦争アメリカ軍用機から猛爆撃を受けたという歴史的背景を彷彿とさせつつ、マークとスアの間に「かつて戦争で争った国同士でも共通の敵が現れれば共に闘う」という文脈が生まれて物語に厚みを持たせているのが素晴らしいと感じました。一見大味な映画に見えるかもしれませんが、マークとトレントの親子関係や、"指輪"に関する描写、冒頭に出てくる女性の伏線等々、ストーリー運びはかなり丁寧に作られていると感じました。
このようにエイリアン侵略スリラーから始まり、ゴア描写、死体の山、巨大宇宙船、エイリアンのバトル、そしてベトコンに武術アクションに大怪獣バトル(!)、さらには「おおおお!」と声を上げたくなるほど燃えるラストまで盛りに盛った特盛っぷりに感服しました。はっきり言って個人的2018年ベスト級の映画です。作り手には感謝と拍手を送りたいと思います。既に脚本が完成しているという3作目も絶対に作ってほしい!

 

・『スカイライン 征服』

エイリアンが地球を征服するまでの三日間をLAの高級マンションにいる普通の人の目を通して描くSFスリラー。ラスト10分のアゲが本当にすごいのでぜひ見てほしいと思います。今作にも繋がる話なので『奪還』鑑賞前に予習することを強くお勧めします。

 

・『ザ・レイド

 インドネシアの格闘技シラットと、イコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアンという映画武術界の至宝を世界に知らしめたアクション映画の傑作。マフィアの巣食うマンションに閉じ込められた特殊部隊が脱出を試みるスリラー要素と超絶技巧のシラットアクションが融合した素晴らしい映画です。

 

VFX制作会社ハイドラックス

ハイドラックス - Wikipedia

スカイライン 征服』の監督を務めたグレッグ&コリン・ストラウス兄弟が設立したVFX制作集団。初期の仕事がリンキン・パークレッド・ホット・チリ・ペッパーズのMV制作だったというエピソードも最高ですし、手がけた映画のラインナップを見るともう何というか「俺の家のDVD棚か!」と言いたくなるぐらい最高の映画ばかりです。映画界ではダルデンヌ兄弟コーエン兄弟ルッソ兄弟といった巨匠兄弟が有名ですがストラウス兄弟もいるぞ!と高らかに叫びたくなります。

 

・信頼できる男、リアム・オドネル監督

eiga.com

moviche.com

まるで午後のロードショーで育ったかのような素晴らしい趣味をお持ちの監督。フランク・グリロに出演をオファーしたのはギャビン・オコナー監督の『ウォーリアー』を見たのがきっかけ、というエピソードも個人的には100点満点です。

映画感想『ボヘミアン・ラプソディ』愛にすべてを

f:id:sexualrocker:20181113183742j:plain

原題:Bohemian Rhapsody
製作年:2018年
製作国:アメリ
監督:ブライアン・シンガー
出演:ラミ・マレックジョセフ・マッゼロベン・ハーディ、グウィリム・リー、ルーシー・ボイントン、マイク・マイヤーズ、アレン・リーチ

あらすじ:1970年イギリスでクイーンというバンドが結成されました。

いやー素晴らしい映画でした。個人的にクイーンは親の影響で好んで聞いていて、バンドについてはメンバーの名前と顔とある程度の生い立ちぐらいしか知らないレベルなのですが深く感動しました。クイーンの曲はちょっとしか知らない!とか「ジョジョの奇妙な冒険」の4部や「魁!!クロマティ高校」でしかクイーンのことを知らない!という方でも確実に熱く心を揺さぶられる映画になっていると思います。

ボヘミアン・ラプソディ』は『ユージュアル・サスペクツ』や『X-メン』シリーズでおなじみのブライアン・シンガー監督の満を持してクイーン伝記映画、ということだったのですが…実際は監督が途中降板、急遽デクスター・フレッチャー監督が後処理を行ったという経緯がありました。この映画の何割がブライアン・シンガー監督の目指したものなのかはわかりませんが、映画終盤までどんどん物語を盛り上げて最後にエモーションを爆発させる作りはブライアン・シンガー映画っぽいなと思いました。おそらく周りのスタッフや俳優陣の努力もあったのでしょう。そんな監督交代劇のドッタバタを全く感じさせない堂々としたバンド伝記映画の傑作でした。
ブライアン・メイ本人がアレンジしたというシンフォニックギターの20世紀FOXファンファーレでいきなりテンション爆アゲなまま最後のライヴエイドまでノリノリで突っ走るこの映画。最終的な落としどころを歴史的パフォーマンスとして名高い85年のライヴエイドにしたのは本当に慧眼だと思います。ともすれば湿っぽくなりすぎたり感傷的な形で終わってしまいそうな題材ですが、この映画では最高のライヴを見た後のような感動と爽快感とほんの少しのさびしさを持って劇場を後にすることができます。とにかくこの約20分に渡るライヴエイド完全再現(メンバーの服装、カメラマンの位置、ステージ脇にいるスタッフの仕草からピアノに置かれたペプシのコップの角度までこだわった驚異的再限度!)は本当に圧巻ですのでこれだけでも見る価値は十二分にあると思います。
若いキャストの演技も素晴らしく、ブライアン・メイ(グウィリム・リー)は理知的でバンドのお母さん的存在、ロジャー・テイラーベン・ハーディ)は野心的で天真爛漫、ジョン・ディーコン(ジョゼフ・マゼロ)は冷静でマイペース、そして自信家で圧倒的な存在感のフレディ・マーキュリーラミ・マレック)!最初はみんなそれほど似てないかな…と思ったのですがそのうちえっ…本人?と感じるほどに憑依する瞬間が何度もあって本当に素晴らしい演技だったと思います。
特に印象に残るのがクイーンのメンバーがお互い衝突しつつも「やっぱり俺たちは最高だな!」となるシーンが何回もあることです。フレディの歌を初めて聴いた瞬間のブライアン・メイの表情、「これ以上やったら犬笛みたいになるぜ!」と文句を言いながら「Bohemian Rhapsody」のコーラスをレコーディングするロジャー、メンバー同士で揉めている中ジョンが「Bite the dust」のベースラインを弾き出すとみんなノリノリになって練習が始まる…等々バンドで音楽をやることの楽しさが表現されていたと思います。
かと言ってこの映画の魅力はバンドをやっている人間にしかわからないということではありません。物を作ることの苦しみ、楽しさ、それを複数の仲間で作り上げていくことの達成感などは我々のような普通の人間にも共感できる感情です。さらにこの映画で描かれるフレディ・マーキュリーの物語、つまり自分が何者か分からずもがき苦しみ、辛い経験や失敗を経て、やがて本当に大切な仲間がいることや愛すべきパートナーに巡り合う…という話は我々にも理解できる普遍的な話だと思います。
僕が最も感動したのは映画の冒頭、一人ベッドで目覚め、髭を整え、車に乗ってライヴエイドの会場に行き、大歓声に沸くステージに向かうフレディの後姿に一人の天才の孤独のようなものを感じたのですが、映画を見ていくと実は全然そんなことはなかったということが後にわかるシーンです。前述したブライアン・メイが初めてフレディの歌を聞いた時の表情と、ライヴエイドのステージで歌い始めたフレディの声を聞いた時の表情が対になっていてさらにボロボロと泣いてしまいました。その人生の劇的な幕引きから何となく「悲劇の天才」とイメージする人も多いであろうフレディ・マーキュリーを、神格化することなく、実際はとても人間的でダメなところもいっぱいあるけど素直で周りの人から愛される魅力的な人物だったということを改めて世界に伝えたいという作り手のメッセージを感じました。
実際の史実と異なる点が多いと指摘されている今作ですが、個人的には伝記というよりも「なぜフレディは世界中から愛されたのか」「個性の塊のようなクイーンがなぜ解散しなかったのか」という部分に焦点を当てた作品だと感じました。この『ボヘミアン・ラプソディ』についてブライアン・メイは「これは伝記映画ではなく、硬い岩から掘り出されたような、純粋なアートだ」と表現しています。この映画はクイーンを愛する人たちと、クイーンの中にいた人たちが作り上げた荒々しく、燦々と輝き、見る者を魅了する彫刻のような美しい映画だと思いました。

 

・『X-MEN フューチャー&パスト』

ブライアン・シンガー監督が手がけたX-メンシリーズで一番好きなのがこの映画。おじいちゃんになってすっかり仲良くなってるプロフェッサーX(パトリック・スチュアート)とマグニートーイアン・マッケラン)、音楽、動作、アクション含め最高としか言いようがないクイックシルバーエヴァン・ピーターズ)の高速移動シーン、60年代ファッションが最高に似合うミスティーク(ジェニファー・ローレンス)など見どころ満載です。

 

・『ストレイト・アウタ・コンプトン』

ミュージシャンの伝記映画の傑作というとやはりどうしてもこの映画を思い出してしまいます。史実と微妙に違うけど感動してしまう点(アラビアン・プリンスの存在が消えている、ドレーが聖人すぎる)と、「悪い側近と袂を分かつ」という点で似通っていると感じました。まあこちらの側近:シュグ・ナイトは比較にならないくらい本当にやばい人だったんですが。

 

・『ボヘミアン・ラプソディ』が完成するまでの苦難の道程

この映画が完成するまでの苦難の道程がまとめられています。引用されてるサシャ・バロン・コーエンの写真のチョイスがいい。フレディ本人が生前に自身の伝記映画を作りたいですか?と聞かれて「面白いと思うけど確実にXXX(トリプルX)レーティングだね!」と答えたという逸話があります。サシャが主演だったら間違いなくそうなっていたと思います。それはそれで見たかった!

映画感想『ヴェノム』もしも君に会わなければもう少しまともだったのに

f:id:sexualrocker:20181106003527j:plain

原題:Venom
製作年:2018年
製作国:アメリ
監督:ルーベン・フライシャー
出演:トム・ハーディミシェル・ウィリアムズ、リズ・アーメット

監督は残酷コメディに定評があるという話と予告編からにじみ出る「寄生獣」…というより「ど根性ガエル」っぽさに惹かれて鑑賞しました。結果は…人が大量に死ぬ「ど根性ガエル」みたいな映画でした。どっこい生きてるエディの中。ただしR15映画のわりに直接的な残酷描写や性描写はほとんどありませんでした。そしてトム・ハーディ主演映画ということで何があっても犬がひどい目にあうことはありません。ご家族連れでも安心して見ることができると思います。

ドレイク(リズ・アーメッド)率いるライフ財団の不正を暴くため嗅ぎ回っていた報道記者エディ・ブロック(トム・ハーディ)はひょんなことから謎の宇宙生物シンビオートに寄生されてしまいました。最初はSFホラーっぽいトーンで進みますがヴェノムがエディに寄生して喋り始めたあたりからコメディ色が強くなるのが印象的でした。僕は鑑賞後「押しかけエイリアンもの」と表現しました。ダーリンに寄生するっちゃ。

そんな感じでこの映画は「ヴェノムがかわいい」に尽きます。銃を向けられて手を上げるエディに「かっこ悪い」と言って手を無理矢理下げさせたり、ピンチを救ってもらったエディが感謝すると「どういたしまして」と答えたりするヴェノムちゃん。さらに恋愛指南してきたりして人間同士の恋愛にも強いという最強っぷり。しかし一方で「ポテトとチョコ!」「あやまれ!あやまれ!(Apologize! Apologize!)」といったもう本当にマスコットキャラか!としか言いようがない振る舞いも最高です。まあその一方で人間を棒切れのように振り回したり脳を食べたりするんですが。

アメリカ本国での公開当時「コメディが古い」という指摘がありましたが、確かに「高級レストランで料理をむさぼり食う主人公に辟易する金持ち客」や「いつも強気な騒がしい隣人を憑依状態で脅して黙らせる」といったシーンを見たときは「あーこういうの最近見なくなったなー」とノスタルジックな気持ちになりました。

その一方でアン(ミシェル・ウィリアムズ)の新恋人である医者のダン先生(リード・スコット)が実に優しくていい人でエディと敵対することなく友好な関係であるというところは今時の映画っぽいと感じました(『アントマン&ワスプ』もそんな感じでしたね)。実際に役者も含めた話し合いで「彼女をトロフィーのように扱って男たちが対決するパターンはやりたくないし面白くもない」という考えから今のような関係になったというのはとても健全なことだと思いました。

敵役のドレイクも『キングスマン』のヴァレンタインや『ウォッチメン』のオジマンディアスを髣髴とさせる「行き過ぎたエコロジスト」という感じで最高です。涼しい顔で人体実験を指示する一方で子どもたちには優しいのが(子どもと話すときに膝をついて目線を合わせるという紳士っぷり!)一筋縄では行かない手ごわい人っぽさに拍車をかけていました。あれはたぶん「環境破壊を繰り返す人類は腐っている。イノセントなのは子どもと宇宙生物だけ」ということなのかな、と思いました。

この映画について「ど根性ガエル」みたいだと述べましたが同時に「運命的な出会いをきっかけに変わっていく二人の映画」であるとも感じました。正直『ヴェノム』を見た後に「この広い地球でキミと出会えたキセキ」みたいな歌を聴くと「は?こっちは宇宙規模なんだが?」と無意味にイキってしまいます。

僕は出会いによっておかしくなってしまう人というのがたまらなく好きなので劇中のとあるセリフ「お前だ、お前のせいだ」で一発ノックアウトされてしまいました。確かに「悪人は食べてもいい」というエディの"ルール"は殺人の肯定であり、報道で憎い相手を倒したいという欲求がヴェノムの凶暴性に侵食されて歪められてしまったと考えると怖い話でもあります。しかし本来無差別に生き物を食うはずだったヴェノムが節度ある捕食をするようになったのもある意味「まとも」ではなくなったということになります。彼らは出会ったことによって明らかに「まとも」ではなくなってしまったし彼らのルールは倫理的には間違っていますが、その間違ったまま進み続けているところもこの二人だと愛おしく感じてしまいます。

登場人物の関係性のアンサンブルがとにかく素晴らしく、エディとヴェノム、そしてアンとダン先生まで巻き込んだドタバタラブコメがまた見たい!ぜひ続編も作ってほしい!と強く感じる映画でした。

 

・『スパイダーマン3

実写版ヴェノムが初登場したサム・ライミ監督版スパイダーマンの3作目。評価が分かれている映画ですが僕は見所もあって好きです。シンビオートの影響で最高にイキってるピーター・パーカー(トビー・マグワイア)と記憶喪失で本来のナイスガイに戻ったハリー(ジェームズ・フランコ)が最高です。ハリーとMJが一緒にご飯を作るシーンがキラキラしてて本当に好きです。本作でヴェノムを演じたトファー・グレイストム・ハーディのヴェノムを評価しているそうです。

 

・『ゾンビランド

ルーベン・フライシャー監督の2009年の映画。ウディ・ハレルソンジェシー・アイゼンバーグエマ・ストーンという異様に豪華な出演陣で評価も高い作品なので見ようと思います。

 

・『ウォーリアー』

個人的にトム・ハーディ主演作品で一番好きな映画です。手負いの獣のようなトムハとその兄(ジョエル・エジャートン)が総合格闘技で戦うことになるスポーツドラマ。胸が熱くなり魂は揺さぶられ最終的に優しい気持ちになる作品です。

 

・魅力的な英国俳優リズ・アーメッド

news.yahoo.co.jp

リズ・アーメッドについては『ローグ・ワン』で初めて見て後に「英国出身でオックスフォード大卒でラッパーでもある」と聞いたときはすごい人なんだな!?となりました。とても知的で政治的発言も積極的に行う方です。

映画感想『アリー/スター誕生』酒と女と男と泪とバラの日々

f:id:sexualrocker:20181101001814j:plain

原題:A Star Is Born
製作年:2018年
製作国:アメリ
監督:ブラッドリー・クーパー
出演:レディー・ガガブラッドリー・クーパーサム・エリオット、アンドリュー・ダイス・クレイ、デイヴ・シャペル

 

あらすじ:有名なカントリー歌手のジャックと歌手を目指すウェイトレスのアリーが出会いました。

試写にて鑑賞しました。1937年の映画『スタア誕生』の3度目のリメイク。映画初出演のレディー・ガガとこれまた監督初挑戦のブラッドリー・クーパーのタッグで公開前から話題となりました。僕は『スタア誕生』未見の前知識ゼロ状態でしたが、アメリカ本国で絶賛の嵐!ベネチア映画祭では上映後スタンディングオベーション!という評判だけは聞いていたので期待に胸膨らませて鑑賞したのですがこれは確かに立ち上がって大拍手したくなるぐらい素晴らしい映画でした。

音楽がテーマの映画で「素晴らしい曲」とされている曲が肌に合わないと全く楽しめなくなることがあるのですが、もう全ての歌が始まるたびに鳥肌が立つほどの素晴らしい曲ばかり。しかもカントリーからロック、ピアノバラードからダンスチューンまで様々なジャンルの歌が節目節目で歌われるのですがそれら全てがそのシーンを的確に物語っているというミュージカル形式になっているのも驚きました。

演技初挑戦とは思えないレディー・ガガの迫真の演技も印象に残りました。リップバームを塗っただけのほぼスッピン(すごくきれいでびっくりしますよ!)で演じた飾らない下町のウェイトレスからバッキバキのポップスターとして花開く(このあたりで我々のよく知ってるド派手でかっこいいガガ様風になるのが最高!)アリーは見事でした。そして環境や見た目が変わっても中身はタフで力強く愛嬌のある女性であると感じさせる演技には唸りました。その女性像も2018年現在という感じで好感が持てます。僕は「俳優を魅力的に映すことができればその人は名監督」という個人的な持論があるのですがそういう意味で言うと"新鋭"ブラッドリー・クーパー監督の手腕も100点満点だと思いました。名監督たちと何度もタッグを組んでいくうちに映画作りのノウハウを吸収していたのかもしれません。

ライヴシーンはどれも本物のスタジアムやフェス会場で収録したというだけあって迫力抜群なのですが個人的にはそのライヴを見ている登場人物の表情がとても印象に残りました。アリーの歌う「La Vie En Rose」を見るジャックの表情、ジャックの弾き語りを見るアリーの表情、ジャックとアリーの歌を見るジャックのマネージャーのボビー(サム・エリオット)の表情…そう、このボビーが本当に最高なんですよ。偏屈で頑固なマネージャーと思いきや…っていう。サム・エリオットの渋い演技にも泣かされてしまいました。
この映画の特筆すべき特徴として「とにかくカメラが近い」ということがあります。ちょっとどうかと思うくらい人物に寄りすぎているのです。そのおかげでスクリーンに映っている人物以外の人がどうなっているのか、ジャックとアリーの関係についてファンやメディアはどう思っているのか、といった描写がほとんどありません。でもそれでいいのです。これは彼と彼女と、その周りの何人かの人々の狭いけど限りなく深くて強い絆の物語なのです。

物語終盤で先述の通りカメラ寄りすぎのアップでジャックとアリーが話している時にアリーのまつげにかかった髪をジャックがそっと指でよける、というシーンがあるのですが、なぜか自分でもよく分からないぐらいこのシーンでぶわっと泣いてしまいました。ここまで二人が積み重ねてきた時間、関係性がこのさりげない動きに凝縮されているような気がして心のダムが決壊してしまいました。これが映画のマジックだ!と感じました。

この映画、あまり詳しくは書けないのですが、見事な円環構造というか、始めに起きたことと終わりに起きることが対になっているのがとても美しくて、そういう点でも深く深く感動しました。ぜひ劇場の大音量でライヴシーンを、劇場の大画面でどアップでとらえたガガ様の美しい肌と二人の絆を体験してほしいと思います。そしてブラッドリー・クーパー監督の次回作が楽しみで仕方がないです!

 

 

・『世界にひとつのプレイブック

自分をコントロールできないブラッドリー・クーパーと不幸な出来事で心が壊れてしまったジェニファー・ローレンスの二人が切なくもおかしい。僕はこの映画で二人のファンになりました。

 

・『アメリカン・スナイパー


監督クリント・イーストウッド、主演ブラッドリー・クーパーアカデミー賞6部門ノミネート作品。『アリー/スター誕生』は元々イーストウッド監督&ビヨンセ主演で企画されていたそうです。大げさかもしれませんがブラッドリー・クーパーイーストウッドを継承しちゃうんじゃないの?と思ってしまいます。

 

・『SING/シング』

歌にまつわる映画として大好きな一本。この映画も素晴らしい歌を見ている時の表情がとても印象的です。特にね…物語終盤にネズミのマイクが見せる表情が本当に最高なんですよ…

 

・『スタア誕生』(1954年)

1937年のオリジナル版をミュージカルとして再映画化したリメイク1作目。『アリー/スター誕生』の序盤でこの映画の主役女優ジュディ・ガーランドへのオマージュがあります。


・リアルストーリー

realsound.jp

この映画が2018年の今リメイクされることの意義、そしてレディー・ガガの実人生に重なる物語について解説した記事。とても読み応えのある素晴らしい記事なのですが、できれば鑑賞後に読むことをおすすめします。

映画感想『イコライザー2』銃を突きつけて「君は何にでもなれるんだよ」と教えてくれる

f:id:sexualrocker:20181030003627j:plain

原題:The Equalizer 2
製作年:2018年
製作国:アメリ
監督:アントワン・フークア
出演:デンゼル・ワシントンペドロ・パスカル、アシュトン・サンダース、ビル・プルマンメリッサ・レオ

あらすじ:元CIAエージェント現タクシードライバー兼必殺仕事人のロバート・マッコールさんの元上司が何者かに殺されました。

「ナメてた相手が実は殺人マシンでした」映画の傑作として名高い『イコライザー』の続編。同じデンゼル・ワシントン主演&アントワン・フークア監督コンビということで派手なアクションを期待して臨みました。が、いい意味で裏切られたというか「えっそういう映画だったの!?」と不意を衝かれて思わず感動してしまいました。確かに爆発や銃撃、前作同様のDIY殺法(閉鎖空間で身近なものを使って複数人を秒殺するマッコールさん十八番の殺法)など派手なシーンはありましたが、シーンの節々に作り手側の切なる願いのようなものを感じました。

物語中盤で主人公ロバート・マッコールと同じアパートに住む美術学生のマイルズがギャング団に片足を突っ込んでしまいます。それを知ったマッコールさん、ギャングのアジトに当然のように手ぶらで侵入してあっさり制圧します。マッコールさんは青年を助け出し厳しく叱ります。「絵描きになるんじゃなかったのか」「2キロの力だ。2キロの力を加えるだけでいい」「人殺しになりたければ引き金を引け。簡単だほら撃ってみろ」「チャンスはあるんだ。生きてる間に使え」「お前は死を知らない」。この出来事(制圧と説教)をきっかけに青年はマッコールさんを慕うようになり絵を描き始めるのです。

前作『イコライザー』も「弱きを助け強きを挫く」話でしたがあちらはどん底にある娼婦の少女を救うという話であり、今作は悪に染まってしまいそうな青年を引き止めるという話になっています。一度悪に染まってしまった人間はどうなるのか。青年は後に身をもって経験することになります。まさにこの映画冒頭でマッコールさんが投げかける「世の中には二種類の痛みがある。体の痛みと改心の痛みだ。どっちを選ぶ?」という問いかけにも繋がっていくのです。

単純で派手なアクション映画にもできそうなこの続編、なぜこのようなメッセージ性の強い映画になったのか。僕はアントワン・フークア監督の出自と、現代の黒人社会の潮流が関係していると考えます。

フークア監督はピッツバーグの治安の悪い地域出身。少年期に黒澤明監督の映画を見て映像作家を志すと同時に「正義と自己犠牲」について学んだといいます。

彼の映画を全作品見ているわけではないのですが、「この世にはどうしようもない悪があると同時にゆるぎない正義もある」というテーマを感じることがあります。それは治安の悪い地域でもギャングになることなく映像作家への道を進んだ監督自信の信念と、同じような境遇にある若者たちもそうあってほしいという願いのようなものなのかもしれません。

僕が本作を見て連想したのは同じく2018年公開の映画『ブラックパンサー』でした。『イコライザー』でフークア監督が荒れたボストンの地に"闇の天使"マッコールさんを降臨させたことと、『ブラックパンサー』でライアン・クーグラー監督が自身の出身地オークランドのスラムにブラックパンサーを降臨させたことが重なりました。もちろん1960年代に実在した政治組織ブラックパンサー党オークランドで結成されたから、という文脈もあると思うんですが映画ラストでスラムの少年に微笑みを投げかけるティ・チャラを見るとライアン・クーグラー監督の「そうあってほしい」という願いを感じてしまうのです。

思い返せば『ブラックパンサー』のサントラを担当したケンドリック・ラマーもコンプトン出身でした。あの映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』でもおなじみのN.W.A.を生み出した治安最悪の犯罪都市です。そして上記の例同様、ケンドリック・ラマーもギャングになることなく真面目に勉強する学生でした。彼はその経験や思想をラップで表現し、ヒップホップ史上初のピュリッツァー賞を受賞することになります。

地域社会とストリートギャングの生活を描く"フッド・ムービー"といえば「ギャングだらけの土地で生まれて俺もギャングになったぜ」というものでしたが、ここ最近は「ギャングだらけの土地だけど俺は真面目に生きるんだ!」というテーマに変化しつつあると聞きます。ケンドリック・ラマーのような若い世代がそういうメッセージを発信し、彼らより一回り上の世代のアントワン・フークア監督がそれを応援するような作品を作るこの美しい構造に胸が熱くなります。

「○○人だから、○○出身だからというだけで君の人生は決まらないんだよ」「君は何にでもなれるんだよ」という作り手の強くやさしいメッセージを感じる映画が増えるのはとてもうれしい。そんなことを関節を逆方向に折ったり銛で心臓を貫いたり爆発で内臓がはみ出たりする映画で感じました。


・『イコライザー


傑作です。敵や悪の拠点が映った次のカットではもう全滅しているという所謂「イコられ」を堪能できます。マッコール(大塚明夫)と悪役テディ(山路和弘)のハマりが素晴らしい吹替版もおススメです。

 

・『ムーンライト』


絵描きを目指すマイルズ君(アシュトン・サンダース)出演作。繊細で心に深い傷と人には言えない悩みを秘めた青年期の主人公役を見事に演じています。

 

・『マグニフィセント・セブン

『荒野の七人』を原案としたアントワン・フークア監督による西部劇。絶対的な正義と自己犠牲ここにあり。全てがかっこよくて大好きな映画です。

 

・『ブラックパンサー

王家とストリートの切ない対決。僕は「タイマンはったらダチ」精神を持つエムバク派です。

 

・『ブラックパンサー ザ・アルバム』

最高の映画と最高のサウンドの組み合わせ。

 

・『ストレイト・アウタ・コンプトン』

HIP-HOP史上最も過激と言われたクルーが実は近所の気のいい兄ちゃんたちだったということを教えてくれるフッド・ムービー。友情のきらめきと終わりの切なさを描く青春映画でもあります。

 

・闇の天使

natalie.mu

フークア監督がマッコールさんのことを"闇の天使"と呼ぶ動画はこちら。劇場版パンフレットでも同じようなことを語っていました。

 

・リアルマッコール

eiga.com

マイルズ君(アシュトン・サンダース)がデンゼル・ワシントンの素晴らしさを興奮気味に語る動画はこちら。劇中のマッコールさんと現実のデンゼルの言動がほぼ同じということがわかります。